新NISAで人気のS&P500に連動する投資信託、例えば「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」などを購入する際、「注文日」と「約定日」の間にはタイムラグがあります。
土日や祝日も影響して、慣れるまでは実際にどの基準価額で購入できるのかが分かりづらい点があります。
投資信託は約定日の基準価額で購入することになるのですが
- いま注文したらいつの基準価額で購入するのか
- 米国株が急落したら、証券口座の資産状況にはいつ反映されるのか
こんな疑問をお持ちの方に向けて、簿記2級、FP2級、証券外務員一種の資格を持つ筆者が、投資信託の約定日と基準価額決定の仕組みを解説します。
投資信託の「基準価額」とは?
基準価額は、投資信託10,000口あたりの値段です。
株価や為替の値動きに加えて、手数料や分配金などをもとに計算し1日1回、20時頃に決定します。
仮に約定日が1月6日であれば、1月6日の20時頃に決定する基準価額で購入・売却することになります。
注文から約定までの流れ(S&P500など米国株投資信託の場合)
冒頭で挙げたS&P500など、米国市場に連動する投資信託に投資する場合、注文から約定まではこのような流れになります。
※時刻は全て日本時間です

※1 米国がサマータイムの期間は、22:30~翌朝5:00が取引時間
※2 土日や祝日など休場日を挟む場合は、ここに挿入(米国の休場日にも注意)
まずは①について、当日注文分となる締切時刻は平日の15:30です。これを過ぎると翌営業日の注文分になります。
最短で購入したいときは15:30までに注文を済ませましょう。15:30を過ぎてしまうと、その日の注文には間に合わず、次の営業日が注文日になります。
注文を済ませたら、その夜23:30~翌朝6:00まで、米国市場の取引時間に株価が変動します。同時にS&P500指数も変動することになります。
6:00以降も為替レートの変動は続き、④10:00頃のレートを参照して当日の基準価額が計算されます。
そのあとは⑤20:00には最終的な基準価額が決定し、⑥22:00頃に証券口座にログインすると、保有資産額が最新の基準価額に更新されています。
新規購入した分が保有資産に反映されるのは⑦受渡日の朝ですが、⑤⑥時点の基準価額で購入することになります。
投資信託の購入タイミングと約定日はこのような流れになっています。
基準価額のポイント
ポイントは、基準価額は③時点の株価と④時点の為替レートで計算されることです。
つまり米国市場の取引時間が終了したタイミングでS&P500指数と為替レートを確認すれば、夜まで待たなくても基準価額をある程度推察できることになります。
もし「昨晩は米国市場が急落・急騰した」と聞いたとして、それが証券会社のマイページで保有資産に反映されるのは、⑥22:00過ぎにログインしたときですね。
先ほどの※2を補足すると、年末年始や日本だけの祝日は米国市場は休場しません。
そのため注文日から約定日までの間に、米国市場の営業日が2日以上となるタイミングがあります。
例えば月曜祝日の3連休前の金曜日に注文すると、祝日を挟んで火曜日が約定日になります。
その間に米国市場は金曜夜、月曜夜の2日間取引されますので、約定日までの株価の変動が大きくなる可能性があります。
基準価額には他にも信託報酬(手数料)など影響しますが、年間で1%程度を日割計算しますので、株価や為替に比べると影響はごくわずかです。
基準価額の推察方法
平日の朝時点で当日の基準価額を推察する例を紹介します。
例1:株価指数(S&P500など)が1%上昇し、10時頃の為替レートが前日と比べて1%円安だった場合、基準価額は2%ほど上昇することになります。
例2:株価指数が2%下落し、為替レートが1%円安であれば、基準価額は差し引きで1%下落すると考えられます。
ドル円の為替レートであれば円安は上昇ということになりますので、シンプルに足して考えればOKです。
あくまでおよその計算ですので、正確な計算結果は夜の発表を待ちましょう。
国内投資信託の基準価額
これが日経平均やTOPIXなど、国内の投資信託の場合はどうかというと、約定日の基準価額で売買される点は米国の投資信託と同様です。
しかし為替の影響がないことに加え、15:30ギリギリに株価を確認してから注文すれば、その後15:30時点の株価で基準価額が計算されます。
米国の投資信託は、注文から約定までに最低でも1営業日分の株価と為替の値動きがありますので、それと比べると国内投資信託は売買しやすいと言えます。
注意点|クレカ積立の決済から約定まで
最後に、筆者もインデックス投資を始めたときに勘違いしていた積立設定のクレカ決済日についてです。
この記事で注文日から約定日までの流れを説明してきましたが、実はクレカに積立の金額が反映されるのは、注文日よりもかなり前です。
このせいで初心者目線では、「いつ注文していつの基準価額で買うのか」がさらに難解になっています。
楽天証券やSBI証券の場合、毎月の積立設定分の金額は前月15日頃にクレカ決済されます。
楽天証券の2025年5月8日の積立設定日を例にすると、4月16日にクレカ決済、5月8日が注文日、そして約定日である5月9日の基準価額で購入しています。(楽天証券のクレカ積立は毎月8日です)
まとめ|約定のタイミングと基準価額の理解
今回は基準価額の計算方法や、証券口座での反映タイミングを解説しました。
ポイントは以下の通りです。
- 15:30までの注文で、次の平日が約定日 ※日本と米国の祝日に注意
- 基準価額は、当日朝の株価指数と為替レートを基に夜に決定
- 積立設定のクレカ決済は前の月
基本的に長期積立投資であれば購入時期を細かく気にする必要はありませんが、売却時やスポット購入の際はタイミングも重要になってきます。
当分売却はしないとしても、基準価額と約定日の仕組みを理解しておくことは、長期投資を安心して続けるための大きな武器になります!