- 新NISAスタート以降、オルカンやS&P500は順調に上昇
- インデックス投資は、長期で見れば勝率は高くやらない手はない投資手法
- それでも「一時的な40%程度の暴落」、「リターンがマイナスの1年間」は必ず来るので覚悟を
- 過去にはリーマンショックのように、半減&回復に4年というケースも
新NISAが始まった2024〜2025年の2年間、オルカンもS&P500も右肩上がりで「20%・30%下がってもすぐ戻る」という順調すぎる相場でした。
インデックス投資は「必ず増える」「放置しておくだけでOK」といった情報が増え、初心者でも安全な投資で勝てて当たり前という空気すら出てきています。
しかし、インデックス投資が長期で強いのは事実である一方、
短期では大きく下落することもあり、年間リターンがマイナスになる年も当然あります。
この記事では、2019〜2025年のオルカン・S&P500の実際の動きと、過去の大暴落のデータをもとに、
「インデックス投資は本当に安全なのか?」
「どの程度の下落を覚悟しておくべきか?」
を初心者にも分かりやすく解説します。
インデックス投資は『右肩上がり』?
インデックス投資は、右肩上がりで成長していくというイメージを持たれがちです。たしかに長期(10〜20年)で見ると、株価指数はほぼ例外なく上昇しています。
しかしその裏側には、後から見ると上がり続けているように見えるという錯覚があります。
実際のチャートを細かく見ると、
- プラスの年があればマイナスの年もある
- 5年単位で見ると“停滞”の期間も珍しくない
- 20〜40%の大きな下落は、過去に何度も発生している
など、インデックス投資の実際の成長曲線は凹凸だらけです。
特に2023〜2025年は米国を中心として、AI・半導体ブーム、インフレ鈍化、利下げ期待など追い風が重なり、「たまたま大きく上がった」期間にすぎません。
順調な成長はありがたい一方で、この2年間しか経験していない初心者ほど、「インデックス投資はずっと上がる」「下がってもすぐ戻る」という危険な誤解を抱きやすい期間でした。
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インデックス投資で特に人気の高い
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) と
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)。
この2つの基準価額が、実際にどのように上下してきたのかを「年ごと」に確認していきます。
どちらのファンドも設定は2018年のため、ここでは 2019年〜2025年(※2025年は12月5日時点) の実績を対象にしています。
なお、2025年分は年明けに最新データへ更新予定です。
出典:三菱UFJアセットマネジメント 基準価額チャート
・eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
・eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
オルカンとS&P500の年ごとの成績(2019〜2025)
2019年から1年ごとに、騰落率や下落幅を見ていきます。基準価額ですので、為替の影響も含まれています。
■2019年:上がりっぱなしの順調相場
オルカン:¥9,254 → ¥11,736(+26.8%)
S&P500:¥9,232 → ¥12,047(+30.5%)
設定の翌年は、順調な成長が続く相場となりました。最も下落した部分(最大ドローダウン)も10%以内で、右肩上がりの1年といえます。
■2020年:コロナショックで下げたものの年末には回復
オルカン:¥11,736 → ¥12,788(+9.0%)
S&P500:¥12,047 → ¥13,288(+10.3%)
2020年はコロナショックにより、3月にはオルカンが¥12,241→¥8,102、S&P500は¥12,861→¥8,432と、わずか1か月で約34%の暴落を記録しました。前年安値も割り込む状況でしたが、その後は急速に回復し、年末には年初を上回る水準で推移しました。
各国の経済政策で支えられ、結果的には年末までに回復したものの、未知の感染症という異常な状況で株価が下がり続けるのは、インデックス投資家にとっても相当なストレスです。
少なくともこの程度の暴落は、想定しておく必要があります。
■2021年:コロナから回復した勢いそのままに上昇
オルカン:¥12,788 → ¥16,971(+32.7%)
S&P500:¥13,288 → ¥19,204(+44.5%)
2021年は、オルカン・S&P500ともにほぼ一年を通して右肩上がりの相場でした。特にS&P500はオルカンを上回る伸びを示し、米国株の強さが際立った年となりました。
前年の大きな下落を耐えたインデックス投資家にとって、「下落中のつみたて投資が功を奏した」と実感できる年でもあります。
■2022年:上げ下げの結果、年間マイナスの波乱の年
オルカン:¥16,971 → ¥16,024(-5.6%)
S&P500:¥19,204 → ¥18,035(-6.1%)
2022年は上昇と下落を繰り返す不安定な相場で、両ファンドとも年間マイナスとなりました。最大ドローダウンは約13%で、暴落とは言えないまでも厳しい1年です。
不調の要因には、ロシアのウクライナ侵攻による地政学リスクと、米国のインフレおよび利上げ政策があります。
さらにこの年は、ドル円が『115.08円から131.11円』と急激な円安進行をしていました。これにより指数そのものと比べると、円建て基準価額の下落幅は10%以上緩和されています。
ドル建てであるS&P500指数自体は、1年間で約20%の下落でした。
■2023年:大きな下落なく順調な回復・上昇の年
オルカン:¥16,024 → ¥20,899(+30.4%)
S&P500:¥18,035 → ¥24,281(+34.6%)
2023年は大きな下落もなく、両ファンドとも順調に上昇しました。最大ドローダウンは約6%と小さく、前年の波乱を経験した投資家にとっては安心できる1年となりました。
米国株中心にAI・半導体関連の成長期待や、インフレ鈍化、利下げ期待などが追い風となり、年初から年末まで右肩上がりの展開が続きました。投資初心者にとっては「インデックス投資は順調に増える」という印象を持ちやすい期間です。
この年の前半には、翌年NISA制度が大幅拡充されることが発表されていました。当時は、最高値圏で新NISAがスタートすることが不安になるほどの上昇でした。
■2024年:大きく上昇も、一時的な下落はあり
オルカン:¥20,899 → ¥27,686(+32.5%)
S&P500:¥24,281 → ¥34,182(+40.8%)
2024年は両ファンドとも年間で大きく上昇しています。最大ドローダウンは8月初旬の17%程度の下落で、新NISAからインデックス投資を始めた投資家にとって最初の試練となりました。
特にS&P500はオルカンを上回る上昇率となり、米国株中心の成長が目立った1年です。
■2025年:12月時点で最高値圏、オルカン好調
オルカン:¥27,686 → ¥32,666(+18.0%)
S&P500:¥34,182 → ¥38,871(+13.7%)
2025年も両ファンドは順調に上昇しており、12月5日時点では最高値圏で推移しています。ただし、4月にはオルカンで約20%、S&P500で約24%と、トランプ関税による大きな下落もありました。
この程度の下落は毎年あるものと思っておくと良いでしょう。
2019〜2025年の成績まとめ:オルカンとS&P500の傾向
ここまで年ごとの動きを見てきましたが、まとめると両ファンドの年間騰落率は以下の通りです。
| 年度 | オルカン(eMAXIS Slim 全世界株式) | S&P500(eMAXIS Slim 米国株式) |
|---|---|---|
| 2019 | +26.8% | +30.5% |
| 2020 | +9.0% | +10.3% |
| 2021 | +32.7% | +44.5% |
| 2022 | -5.6% | -6.1% |
| 2023 | +30.4% | +34.6% |
| 2024 | +32.5% | +40.8% |
| 2025 | +18.0% | +13.7% |
年間利回りの平均 ※各年の騰落率を合計して年数で割った単純平均です
- オルカン(eMAXIS Slim 全世界株式):+20.5%
- S&P500(eMAXIS Slim 米国株式):+24.0%
年ごとの動きを見ると、オルカンとS&P500はどちらも堅調な成長を示しています。
年間利回りの単純平均では、オルカンは+20.5%、S&P500は+24.0%と、3年~4年で資産が倍増するぐらいの素晴らしい成長ペースです。
もう1つ注目が必要なのは上下の動きの相関性です。両ファンドはほぼ同じタイミングで上昇・下落しており、分散効果は低いことがわかります。また、期間中はオルカンよりS&P500のほうが年単位で上回ることが多く、米国株式の強さが際立っていました。
このデータから、インデックス投資は長期で見れば成長する傾向がありますが、短期的な上下の変動は避けられず、暴落や停滞期も必ず経験するということが確認できます。
【過去の大暴落】S&P500はリーマンショックで半値以下に
2019〜2025年のオルカンやS&P500は、下落しても比較的すぐに回復しています。
そのため「下落しても持っていれば戻る」「むしろあのとき買っておけばよかった」という印象を持ってしまいます。
しかし、過去の暴落はまったく別次元でした。
その代表例がリーマンショックです。
1年で半減し、回復まで4年という“本気の暴落”
リーマンショック当時のデータを振り返ると、世界中の金融機関が次々と破綻し、市場全体が「将来の見通しが立たない」状況に陥っていたことが分かります。
図1:2007年2月~2013年2月 S&P500指数の推移(出典:Yahoo!ファイナンス S&P500チャート)

S&P500は2007年末の1500ポイント前後から下落が始まり、2008年はほぼ一年を通じて値下がりが続きました。最終的には2009年3月に666ポイントまで落ち込み、わずか一年余りで指数は半値以下(約▲55%)に沈みました。
しかも下落後、すぐに回復したわけではありません。信用収縮による景気悪化が長引き、S&P500が再び1500ポイント前後の水準まで戻ったのは 2012年。底値から回復まで、実に4年近くを要したことになります。
2019〜2025年のように「数ヶ月で反発する」相場とは異なり、
この時期は半値以上に急落し、その後長期間戻らないという、まさに“大暴落”といえる局面でした。
まとめ|インデックス投資に暴落と低迷は付き物
オルカン(eMAXIS Slim 全世界株式)やS&P500(eMAXIS Slim 米国株式)は順調に上昇しています。ここ3年は特に順調なため、筆者も含め、多くの投資家は『下がってもすぐ戻る』と楽観ムードを感じやすい状況です
長期で見ればインデックス投資は勝率が高く、やらない手はない投資手法ですが、注意すべきは次の3点です。
- 一時的な40%程度の暴落はいつでも起こり得る
- 年間でリターンがマイナスになる年もある
- 過去にはリーマンショックのように半減し、回復に4年かかったケースもある
インデックス投資は「危険だからやるな」という意味ではありません。長期での成長が期待できる一方で、暴落や低迷は必ずついて回ります。
入金は早めに、かつ多めにすることも投資効率の観点では有効ですが、同時にリスク管理の意識を持つことが大切です。
暴落に備えて資金配分や生活防衛資金を整え、心理的に耐えられる範囲で運用を続けることが、長期で勝つための基本です。
【重要事項】 当記事は、各投資信託に関する情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘を目的としたものではありません。記事内の内容や筆者の見解はあくまで個人的な意見であり、最終的な投資判断はご自身の責任において、十分な情報に基づいて行ってください。投資には元本割れのリスクや、市場の変動、為替レートの変動等により損失が生じる可能性があります。また、過去の運用成績は将来の運用成績を保証するものではありません。


