毎月分配型の投資信託は、分配金を毎月受け取れる仕組みの投資商品です。定期的な現金収入があることから、特に高齢者層や安定収入を求める層に人気です。
一見すると魅力的に見えるこの商品ですが、実際には「元本の一部を取り崩して分配している」「複利効果を得られにくい」「税金面で非効率」といったデメリットがあります。
また、販売手数料や信託報酬が高めに設定されているケースも多く、長期的な資産形成には向かない商品といえます。
この記事では、毎月分配型投資信託の仕組みと主なデメリット、そしておすすめできない理由を、FP資格を持つ筆者がわかりやすく整理しています。
「毎月もらえる」ことの裏側にある仕組みを理解し、自分に合った投資を考えるための参考にしてください。
毎月分配型投資信託とは?
毎月分配型の投資信託とは、その名の通り分配金が毎月支払われるタイプの投資信託です。特に高齢者層に人気があり、お小遣い感覚で受け取れる、年金の足しになる、といったイメージを持っている方も多いです。
一見すると、毎月の「定期収入」が得られる点が魅力的に見えますが、注意すべきなのは分配金のすべてが運用益ではないという点です。
運用成績が思わしくない場合でも、分配金の支払いを維持するために、元本の一部を取り崩して支払っているケースも多くあります。
毎月分配型投資信託の主なデメリット
ここからは毎月分配型投資信託のデメリットを紹介します。
複利効果が得られない・税金が非効率
毎月分配型では分配金が現金で払い出されるため、再投資による複利効果が期待できません。さらに、分配のたびに税金(約20%)が差し引かれ運用効率も悪化します。
特に、資産を育てたい若年層や長期投資家にとっては「複利」の恩恵が得られないことは大きなデメリットです。
元本を取り崩す仕組み
分配金=利益と思いがちですが、実際には運用益が足りない場合、元本を削ってでも分配金を出すケースが少なくありません。
たとえば、月1万円の分配金を受け取っていても、そのうち7,000円が元本の取り崩しだった場合、それは「自分のお金を一部返してもらっている」に過ぎず、さらには「そもそも収益がなく、分配金の全てが元本の払い戻し」という月も少なくありません。
にもかかわらず、「元本はそのままで、収益を分配金として受け取っている」と認識していれば大きな間違いです。
このように元本を取り崩して支払われる分配金は「元本払戻金(特別分配金)」といいます。利益ではないため非課税ですが、文字通り元本は払い戻されて目減りしています。
含み益がある場合は「普通分配金」として収益から分配金が払い出され、課税された後に受け取ります。これが本来あるべき分配金です。
手数料が高い
毎月分配型の商品は、対面型の証券会社や銀行窓口で販売されることが多く、販売手数料が割高に設定されていることがほとんどです。
もし販売手数料が割安のネット証券で購入したとしても、投資信託ごとに設定されている信託報酬は、再投資型のインデックスファンドと比べて割高です。
一例として、毎月分配型投資信託の人気№1と、再投資型インデックスファンドの人気№1、2つの投資信託を手数料の面で比べてみましょう。
① インベスコ世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし> (毎月分配型)
② eMAXIS Slim米国株式(S&P500) (再投資型)
項目 | ①インベスコ 世界厳選株式オープン(毎月分配型) | ②eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)(再投資型) |
---|---|---|
購入時手数料 | 最大3.30%(税込) | 0%(ノーロード) |
信託報酬 | 年率1.903%(税込) | 年率0.0814%(税込) |
信託財産留保額(解約時) | 0.3% | なし(0%) |
前述の通り購入時手数料は、毎月分配型でもネット証券であれば0%の場合もあります。
信託報酬とは、保有額に対して1年間でかかる手数料です。1,000万円分保有しているとすると、①は毎年190,300円かかるのに対して、②は8,140円とその差は約23倍です。
この信託報酬の差を覆す運用成績であれば問題ありませんが、現状ではeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)が運用成績でも上回っています。
毎月分配型をおすすめできない理由
ここまで毎月分配型の投資信託のデメリットを解説しました。実際に現在のNISA制度では、長期投資の資産形成に向かないことから、毎月分配型の投資信託は投資対象外となっています。
購入時手数料や信託報酬などのコストが割高な商品が多く、さらに分配金の原資が運用益ではなく、元本から取り崩されているケースも少なくありません。これにより、あたかも「収益が出ている」かのような錯覚を与えます。
そのため実質的には損をしていても、それに気づかずに保有を続けてしまう投資家も多いのが現実です。
さらに、分配金のうち「元本払戻金(特別分配金)」が非課税である点も「得している」と誤認する一因となっています。
商品を十分に理解しないまま購入してしまう人が多いことから、おすすめできないと考えています。
まとめ|本質を見抜こう
今回は「毎月分配型」投資信託のデメリットを解説しました。
あらためて最も大きな懸念は、こうした商品を十分に理解しないまま、証券会社の窓口で進められたからと購入している人が少なくないことです。
もちろん年金のように毎月分配金を貰えることは有意義なので、ここまで解説したような仕組みを正しく理解した上で購入していれば、全く問題はありません。
しかし仮にそうであれば、分配金というかたちでお金を受け取るよりも低コストのインデックスファンドを保有し、必要な金額だけ自分で取り崩すことが、税制面でも資産効率の面でも合理的だと気づくはずです。
本当に得したいなら、“仕組みを知ること”が最初の一歩です。
【関連記事】人気の低コストインデックスファンド運用実績はこちら
【重要事項】 当記事は、各投資信託に関する情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘を目的としたものではありません。投資には元本割れのリスクや、市場の変動、為替レートの変動等により損失が生じる可能性があります。また、過去の運用成績は将来の運用成績を保証するものではありません。最終的な投資判断はご自身の責任において、十分な情報に基づいて行ってください。