株式投資にはいろいろなスタイルがあります。
新NISAでも大人気のインデックス投資は、株価の値上がりによる含み益が魅力ですが、暴落すると資産が一気に減るリスクもあります。もちろん長期的には回復する可能性がありますが、精神的には不安になる方も多いでしょう。
一方で高配当株は、株価が下がっても配当は基本的に変わらず受け取れます。つまり、株価の上下にかかわらず「安定した収入源」を作ることができるのです。一度受け取った配当金が減るようなこともありません。この安定性が、高配当株投資の大きな魅力です。
筆者自身も、メインはインデックス投資ですが、高配当株投資も実際に行っています。株価が下がっても配当は変わらず受け取れるため、安定した収入源を作る手段として有効だと感じています。
本記事では、FPと証券外務員の資格を持つ筆者の視点で、高配当株投資を初心者が始める際に押さえておきたい、注意点とポイントを解説します。
権利確定日と保有タイミング
まず、高配当株を買う前に銘柄ごとの権利確定日を確認する必要があります。
多くの銘柄は年2回、3月と9月に権利確定日が設定されており、次に多いのが6月と12月です。少数ですが、その他の月に設定されている銘柄もあります。
中間配当と期末配当の年2回がある場合は、2回の合計が年間配当金となり、半分ずつ配当されるケースが一般的です。銘柄によっては年1回(3月のみなど)の一括配当や、2回の配当額に差がある場合もありますので注意が必要です。
権利確定日は通常、月末から3営業日前に設定されており、その日を保有したまま終えるだけで配当の権利を得ます。その後、翌日の権利落ち日に売却してもOKです。
権利確定日についてはこちらの記事で解説しています:
✅株主優待・配当金はいつまでに買って、いつ売っていい?
①銘柄の権利確定月を確認
②一括配当や配当の偏りに注意
③権利確定日までに保有して、権利落ち日に売却でもOK
配当利回りだけで判断しない
高配当株を選ぶときに注意したいのが、配当利回りの高さだけで判断しないことです。
配当利回りは、株価に対する年間配当額の割合で計算されるため、株価が下がると一時的に利回りが高く見えることがあります。しかし株価下落の背景には、業績悪化や減配リスクが隠れていることもあるため、利回りだけで「お得」と判断するのは危険です。
もちろん高い配当利回りは魅力ですが、「利回りの高さには理由がある」と考えることが大切です。特に、高配当株で最も避けたいのは配当金が下がること(減配)です。
過去の配当実績や累進配当の有無、DOE(株主資本配当率)の導入状況なども確認して、安定的に配当が支払われる銘柄かどうかを見極めることが大切です。
また、業種による配当の傾向も押さえておく必要があります。例えば、鉄鋼業や海運業は一時的に高配当となることがありますが、減配リスクも高めです。一方で銀行業や通信業は配当利回りはやや低めですが、安定性が高い傾向があります。
①配当利回りだけを見ない
②配当実績と累進配当を確認
③業種ごとの傾向もチェック
狙い目かどうかは株価次第
高配当株を選ぶとき、初心者がやりがちな失敗のひとつが、人気ランキングや話題の銘柄に飛びついてしまうことです。
株価は常に変動しているため、ランキングやニュースで注目されている株が「お得」とは限りません。雑誌やインターネットで「高配当株人気ランキング」を見ても、その前提の株価と同じ株価で購入できるとは限らないからです。
例えば雑誌のランキングであれば、何週間も前の株価が参考価格として掲載されています。今の株価を気にせず銘柄だけを見て買ってしまうのは、旅行雑誌の「人気の宿ランキング」を見て、値段を確認せずに予約するようなものです。
その情報の前提株価よりも株価が上がっていれば、利回りは下がります。逆に株価が下がっていれば一見お得に見えますが、ここ数週間で下落傾向の銘柄であれば、その後の株価下落リスクも考えなければなりません。
高配当株の狙い目かどうかは、配当利回りだけでなく、株価水準や業績、減配リスクなどを総合的に判断することが大切です。「人気銘柄を鵜呑みにして買わない」と覚えておきましょう。
最終チェック!高配当株を買う前の確認リスト
高配当株を選ぶ際は、これまで紹介したポイントを踏まえて、最終的に以下の項目をチェックすると安心です。
1.配当利回り
企業規模や業種により3.5%や4.0%を基準に探しましょう。5%を超えてくると注意も必要です。
2.上場市場
安定性の目安になります。慣れるまでは東証プライム上場企業から選びましょう。
3.時価総額(企業規模)
規模が大きい企業は安定性が高い傾向があります。初心者のうちは1,500億円~5,000億円を下限にして大手企業に絞ると安心です。
4.配当性向
利益のうち何%を配当にしているかの割合です。低すぎると株主還元意欲が低いですが、高すぎても無理がないか心配です。30%~70%を目安にしましょう。
5.累進配当・DOEの導入
株主還元方針を確認します。「累進配当やDOEを導入している」、「何年か減配していない」企業は減配リスクが低めです。
6.利益が出ているか
企業が安定して配当を出すには、利益が必要です。赤字企業は避け、減益が続いていないか、直近で大幅減益していないかも確認しましょう。
7.権利確定日
何月の配当銘柄かしっかり確認しましょう。特に「3月末一括配当で、9月はなし」や、「9月は30円、3月は70円など偏りがある」ケースに注意が必要です。
8.株価水準
株価が高すぎると利回りが低下し、低すぎるとさらに株価が下落する懸念があります。割安か割高か正確にわかったら苦労しませんが、株価を気にせずに買うことがないようにしましょう。
9.業種の分散
複数銘柄を選ぶ場合に、1つの業種に偏らないように注意しましょう。例えば銀行・商社・通信・不動産のように、複数業種への分散を意識してください。
まとめ|高配当株の初心者向け始め方と注意点
高配当株は、配当利回りだけで選ぶのではなく、企業の安定性、減配リスクなどを総合的にチェックすることが大切です。初心者はまず、東証プライム上場の大手企業を中心に、分散投資を意識して銘柄を選ぶと安心です。
人気の高配当株ランキングや話題の銘柄を参考にするのも良いですが、株価や利回りの変動を考慮せず飛びつかないように気をつけてください。
本記事で紹介した項目のチェックを忘れずに、安全に高配当株投資を始めてください!
【重要事項】本記事は株式投資や配当金に関する情報を提供していますが、投資判断を推奨または保証するものではありません。株式投資には価格変動リスクや減配リスクがあり、将来の配当の実施・金額が確約されるものではありません。最終的な投資判断は、ご自身の責任において十分な情報をもとに行ってください。