大学生の扶養控除の「年収の壁」が引き上げられることが2025年”税制改正の大綱”に明記されました。
これにより大学生がアルバイトで稼げる金額が増えることになります。
本記事ではFPの視点で、大学生の稼げる金額の目安や、超過時の親の増税額を具体的に試算し解説します。
この記事でわかること
- 扶養控除の仕組みと大学生の条件
- 2025年の改正で大学生は「いくらまで稼げる」ようになるのか
- 親の税金はどう変わるのか、年収別に具体的に解説
アルバイトをする大学生本人とその親が押さえておきたいポイントをわかりやすくまとめました。
※2025年5月時点の、財務省・令和7年度税制改正の大綱をもとに作成しています
大学生の特定扶養控除とは?
基本的に親族1人あたりの扶養控除は38万円ですが、大学生の特定扶養控除は63万円と大きくなっています。
これは、大学の学費や一人暮らしの生活費など、経済的負担が大きい時期であるため、親の税負担を軽減する目的で控除額が高く設定されているからです。
この控除により、親の課税対象が63万円分減って税負担が軽減されます。減税額は親の所得税率に依存し、収入が多いほど節税効果が大きくなります。
この記事で「大学生アルバイト」としている特定扶養控除の税制上の条件は、「19歳以上23歳未満で学生であること」です。
もちろん専門学校であっても「学生」として認められます。一方、大学生であってもこの年齢範囲に入らない場合は特定扶養控除は適用されません。
このように、年齢と学生であることの両方を条件にしているのは、実際にかかる教育費や生活費の負担を考慮した税制上の配慮だからです。
【2025年改正】年収の壁はいくらまで引き上げ?
冒頭でも述べましたが、2025年度の税制改正では大学生など「特定扶養控除」の対象となる学生の年収の壁が引き上げられます。
これまで特定扶養控除の適用を受けるための、(子の)年収の上限は103万円でした。この103万円とは、給与所得控除の最低額55万円と基礎控除48万円の合計から算出された数値です。
今回の改正案では、この上限が最大で150万円まで引き上げられます。
加えて150万円を超えた後も、63万円の控除がいきなり0円になるわけではなく、(子の)年収188万円まで段階的に控除が減額されます。

出所:自由民主党
この改正により、親の税金額が増えることなく、学生がアルバイトで得られる収入の範囲が150万円まで広がります。
さらに学生であれば、社会保険の加入義務は基本的にありませんので、今回の所得税・住民税の年収の壁の引き上げで、税金面のメリットをダイレクトに享受できます。
結論として”親の税金に影響なく、大学生がアルバイトで年間に稼げる金額”は従来の103万円から150万円に上がることになります。
※年収とは、その年の1月~12月の給料日の給与の合算です
親の税負担は?大学生が年収超過した場合の試算
大学生の子どもがアルバイトなどで「特定扶養控除」の対象条件を超えると、親はその控除を受けられなくなります。その結果、親の課税対象が増えてしまい所得税・住民税の負担がアップします。
この対象条件が、従来であれば年間103万円ですね。
ではその上限を超えてしまい、特定扶養控除の対象外となると、親の税金はどのぐらい増えるでしょうか。
ここでは親の扶養控除が消失した場合の「税金の増加額(年額)」を年収別に試算します。
年収(目安) | 所得税率 | 所得税 増額分 | 住民税 増額分 | 合計 増額分 |
---|---|---|---|---|
500万円 | 10% | 63,000円 | 45,000円 | 108,000円 |
700万円 | 20% | 126,000円 | 45,000円 | 171,000円 |
1,000万円 | 23% | 144,900円 | 45,000円 | 189,900円 |
1,500万円 | 33% | 207,900円 | 45,000円 | 252,900円 |
年収が高いほど所得税率も高く、控除額の63万円に年収に応じた所得税率を掛けています。
一方で住民税は、所得税と異なり控除額は45万円で、標準的な税率は約10%(市町村によってわずかに異なります)です。
従来であれば、大学生がアルバイトで年間103万円を超えて稼いでしまうと、親の年間の税金がこれだけ増えることになります。
学生の皆さんは、数万円のバイト代のために親の税金負担が増えることにならないように注意が必要です。
大学生の働き方はどう変わる?
ここまで解説したように、今回の引き上げで年間150万円までは親の税金に影響なく稼げるようになります。
150万円を超えると親の税金が徐々に増額していき、最終的に188万円を超えると控除が0円となり、先ほどの試算結果の増額となります。
これにより、以下のように働き方の幅が広がります。
- 長期休暇中に多めにシフトを入れられる
- 時給が高い業種でも上限をあまり気にしなくて良い
- 奨学金や仕送りに頼りすぎず、自分で生活費を補える
親の立場からすると、アルバイトで年間150万、4年で600万円も自分で稼いでくれるとかなり助かりますね。一方で、バイトにばかり専念せず学業に注力して欲しい気持ちもあるでしょうから、悩ましいところです。
まとめ|大学生と親が押さえるポイント
今回は大学生(19歳以上23歳未満の学生)の、”年収の壁”引き上げについて解説しました。
これまでの上限103万円は、扶養控除に関する知識が浅かったり、うっかりしてしまうと超過しかねない水準でした。
「150万円への引き上げ」と「188万円までの段階的な減額」が実現すれば、大学生のアルバイトの幅はかなり広がるでしょう。
1年のうち講義がある時期で月10万円、長期休暇の時期(8月、2月、3月)で月20万円、これでやっと150万円と考えると、今回の引き上げは十分な金額と考えられますね。
今回の改正をきっかけに、大学生の働き方や家計を見直す良いタイミングです。