相続税の基礎をわかりやすく解説|実際に払うのは10人に1人!

スポンサーリンク
制度解説
記事内に広告が含まれています。

2025年9月、「3億円の保険金が相続税で全滅!」という投稿が、SNSで大きな話題になりました。

これだけ聞くと衝撃的ですが、実際には多くの人には関係のない話です。相続税は、基礎控除や生命保険金の非課税枠などがあり、課税対象になるのは全体のごく一部。

3億円の相続税を支払う必要があったということは、そもそもの財産がそれ以上に高額だったということです。

本記事では、この話題をきっかけに「相続税とは何か」をファイナンシャルプランナーの視点でわかりやすく解説します。控除の仕組みや、実際にどのくらいの人が支払うのか、また計算の仕方など、相続税について役立つ内容をまとめています。

スポンサーリンク

相続税とは?

相続税とは、人が亡くなったときに財産を引き継ぐ際にかかる税金です。

相続の対象になるのは基本的に法定相続人(=家族)ですが、遺言があれば家族に限らず、指定した相手に相続させることも可能です。

まずは相続税の基礎として、法定相続人の仕組み相続税の控除について解説します。

法定相続人とは

法定相続人とは、遺言がない場合に相続を受けることが法律で決められている家族のことです。
基本的には、配偶者・子・親・兄弟姉妹に相続権があります。

遺言があれば、法定相続人以外の人に財産を渡すことも可能ですが、相続税の計算では法定相続人の人数が影響してきます。

遺言による法定相続人以外への相続は、例えば恩人やビジネスパートナーなどが考えられます。本当に他人でも良く制限はないので、極端な話、好きな芸能人に相続したいと遺言に書けば、それも効力があります。(相手に承諾してもらえるかはわかりませんが)

法定相続人の優先順位

配偶者・子・親・兄弟姉妹であれば誰でも法定相続人になるわけではなく、「配偶者+最も優先順位の高い人」までが法定相続人になります。

まず配偶者がいる場合、配偶者は必ず法定相続人になります。

配偶者の有無に関わらず、次に子・親・兄弟姉妹はこの順番に優先順位となっています。つまり子がいると、親や兄弟姉妹は法定相続人にはなりません。

優先順位被相続人(亡くなった人)との関係性法定相続人かどうか
必ず法定相続人配偶者いれば必ず法定相続人
第一順位配偶者の有無に関わらず法定相続人
子が死亡している場合は第一順位子が死亡していると、代わりに法定相続人
第二順位被相続人に子(孫)がいない場合には法定相続人
第三順位兄妹姉妹被相続人に子(孫)と親がいない場合には法定相続人

ポイントを補足すると
・同じ順位の中では、何人いたとしても全員が法定相続人(養子には制限あり)
・離婚したら、元配偶者は法定相続人にならない
・離婚して親権がなくても、子は法定相続人

法定相続人に該当しない家族に財産を遺したい場合は、遺言を書いておきましょう。例えば配偶者と子がいる人が、万が一のときには親にも遺したい場合などですね。

相続税の控除

法定相続人の人数は相続税の基礎控除額に影響します。これは遺言によって、法定相続人ではない人に相続する場合も同様です。

◆税金の控除額
税金を計算する際に差し引ける金額のこと。差し引いた残りの金額に税金がかかります

相続税は『3,000万円+600万円×法定相続人の数』を基礎控除することができます。

例1:配偶者+子ども2人で、法定相続人が3人
 ⇒3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円を控除

例2:配偶者や子はなく親1人で、法定相続人が1人
 ⇒3,000万円+(600万円×1人)=3,600万円を控除

亡くなった人の資産がこの控除金額以下であれば、相続税は0円になります。

生命保険金の控除

相続税には、基礎控除とは別に生命保険金の非課税枠という控除もあります。亡くなった人が契約していた生命保険金は、一定額まで控除することができます。

非課税枠の計算式は『500万円×法定相続人の数』です。

例:配偶者はなく子ども2人で、法定相続人が2人
 ⇒500万円×2人=1,000万円を生命保険金から控除

基礎控除とあわせて、この控除も使うことで、生命保険金の一部または全額が課税対象外になり、相続税の負担をさらに軽くできます。

まとめた例を1つあげます。

例:配偶者はなく子ども2人で法定相続人が2人、生命保険金が1,500万円+その他の財産が3,500万円
 ⇒生命保険金の控除 500万円×2人=1,000万円まで非課税のため500万円のみ課税対象
 ⇒相続税の控除 3,000万円+(600万円×2人)=4,200万円まで非課税。
  生命保険金の課税対象500万円と、その他財産3,500万円をあわせて4,000万円のため、4,200万円以内に収まり非課税

生命保険金の控除も活用すれば、このぐらいの資産額でも相続税を0円にできます。

配偶者の控除

相続税はかなりの金額まで控除されることが伝わったかと思いますが、実は配偶者への相続に限ってはさらに大きな控除があります。

ここまでの控除額の計算で、もし相続税の課税対象が0円にならなかった場合でも、そのうち配偶者への相続分は1億6,000万円まで非課税となります。

これは世代が変わらない相続(配偶者への相続)を優遇する制度です。

ここまで解説した基礎控除・生命保険控除に配偶者控除を組み合わせることで、ほとんどの場合、配偶者は相続税を支払わずに財産を受け取れます。

※実際の配偶者控除は、1億6,000万円もしくは「法定相続分」のうち金額が大きい方ですが、今回は省略します

相続税は富の再分配

ここまで解説したように、相続税には多額の控除額があります。

実際の統計でも、相続税がかかるほどの財産を遺せるのは亡くなった人の10人に1人程度で、庶民の多くには関係のない税金です。

相続税の本質は、単に「亡くなった人から税金を取る」ことではありません。
むしろ富裕層から多くの財産を徴収して再分配し、社会全体の公平を保つ仕組みとして設計されています。

富裕層から不満の声があがるのは当然といえますが、一般人にとっては他人事ともいえる税金です。

相続税が3億円を超えるケース

ここで、冒頭であげた「3億円の保険金が相続税で全滅!」という話をあらためて考えてみましょう。

3億円の生命保険金が丸ごと相続税とは、一見ひどい話のように思えるかもしれませんが、これは一般人に起こりうる話ではありません。

このケースは、法定相続人の人数はわかりませんが、親から子への相続ということです。
相続税が3億円を超えるとなると、少なく見積もっても6億円以上の相続財産であったと考えられます。

今回はそれだけの財産を持つ富裕層の家庭の話ですが、SNSで同調して「税金が高すぎる!」と言っている人は、どの程度の資産を持っているのでしょうか・・・

この計算だけ見るとむしろ、亡くなった人は家族が相続税で困らないように、税額を逆算して生命保険金を掛けておいたと考えられますね。

まとめ|相続税は一般人には無関係

この記事では相続税の控除や、その計算のための法定相続人について解説しました。

さらに、今回は省略しましたが、居住用の土地は評価額が最大80%減額されるなど、相続税を減らすための制度はまだまだあります。

これらの控除によって、一般人(一般的な資産水準の人)は相続税を支払う必要がほとんどないことがおわかりいただけたかと思います。

つまり相続税は、富裕層から財産を徴収し社会に還元する制度なのです。

とはいえ、誰でもいつかは相続に関わることになりますので、相続税のポイントは押さえておきましょう!

タイトルとURLをコピーしました