貯金をしている人としていない人の間には、大きな差があると言われています。
その差は収入や生活環境だけでなく、「お金に対するマインド」によって大きく左右されるのです。
なぜ同じような収入でも、貯金ができる人とできない人がいるのでしょうか?その答えが、『サイコロジー・オブ・マネー』に記されています。
この本は貯金ができる人とできない人の心の違い、つまり「貯金するためのマインド」を教えてくれます。
FP2級の資格を持つ筆者が、無理のない貯金を実現するためのヒントが詰まった一冊として紹介します。
書籍情報
- 価格: 1,800円(税抜)
- 書籍名: サイコロジー・オブ・マネー
- 著者: モーガン・ハウセル
- 出版社: ダイヤモンド社
- 発売日: 2021年4月21日
『サイコロジー・オブ・マネー』とは?書籍の概要
本書『サイコロジー・オブ・マネー』が教えてくれるのは、お金に関する具体的な戦略や投資テクニックではありません。
「なぜ人は非合理的なお金の行動をとってしまうのか」に焦点を当てた一冊です。
著者は金融ジャーナリストとして数多くの投資家や経済人を取材してきた経験から、「お金に関する意思決定は、知識ではなく心理に支配される」と強調します。
本書は全20章で構成されており、各章では異なる「お金の心理」が語られます。
例えば、なぜ収入が多くても貯金ができないのか、なぜ人は他人の成功に過剰に反応してしまうのか、といった思わず共感してしまうテーマばかりです。
特に印象的だったのは「お金の成功はスキルではなく、行動で決まる」という視点です。
つまり誰もが手に入れられるはずの「良いお金の習慣」が、資産形成のポイントになるのです。
金融知識が少ない人でも読みやすく、実際の行動に活かしやすい内容となっているため、これから資産形成を始めたい方にもぴったりの一冊です。
ここからは、印象的だったテーマをいくつか紹介します。

収入 − エゴ = 貯蓄
最も現実的でストレートなテーマが「収入 - エゴ = 貯蓄」という公式です。
この考え方は、いくら収入が高くても収入が増加するにつれて生活水準も上げてしまえば、貯蓄は増えないという現実をシンプルに表現しています。
人は見栄や他者との比較、あるいは「成功している自分」を演出するために、車やブランド品、広い家などを選ぶことがあります。
しかし、これらの支出は一時的な満足感しか得られず、将来の自由を奪うことにもつながります。何よりキリがありません。
モーガン・ハウセルは「本当に裕福な人とは、見た目でわからない人たちだ」と述べています。
資産形成を成功させるためには「収入を増やす」だけでなく、「エゴを抑えて生活水準をコントロールする」ことが同じくらい重要です。
使い道のない貯金をしよう
何のために貯金をしているかと聞かれ、具体的な答えがないのであれば「それ意味あるの?」と思えてしまいますよね。
一般的には「貯金には目的が必要」と考えがちですが、本書ではその逆の考え方、「何に使うか決まっていない貯金こそが、最も価値がある」と紹介されています。
理由は「人生には予測不能な出来事が必ず起こる」からです。
病気、リストラ、家族の事情など、計画していなかった支出が突然訪れることは避けられません。そんなとき、「用途が決まっていないお金」があるかないかで、その後の選択肢は大きく変わります。
この考え方は、単に「非常時のため」だけではなく、人生の自由度を高める「心の余裕資金」としても活かされます。
貯金するのに深い理由は不要です。堂々と「使い道のない貯金」に勤しみましょう。
誤りの余地を残す
金融や投資において「リスク管理」の重要性は言わずもがなですが、本書ではそれを「誤りの余地(room for error)」と表現しています。
これは「予測通りにいかない可能性を前提に行動せよ」という意味であり、長期的に成功するためには「ミスをしても耐えられる設計」が不可欠ということを示しています。
たとえば、すべての資金を一つの銘柄や不動産に集中させた場合、一度のミスが取り返しのつかない損失につながることがあります。
しかし、一定の余白=誤りの余地を持たせることで、多少の失敗があっても再起可能な状態を保てます。
これは投資で言うところの、分散投資や生活防衛資金の確保などにも通じる考え方です。
そして投資に限らず「余白をもつ」ことは重要です。転職、結婚、出産、介護などライフステージの変化は予期せぬタイミングで訪れることがあります。
こうした変化に柔軟に対応するためには「誤りの余地」が必要なのです。
まとめ:貯金も資産形成も”マインド”が最重要
『サイコロジー・オブ・マネー』を読んで最も強く感じたのは、貯金や資産形成する上で重要なのは、知識や理論よりも「心理」だということです。
簿記やFPといった知識を持っていても、それだけでは現実の最適な行動にはつながらず、本能や感情、周囲との比較といった”マインド”が大きく影響してしまうことを私自身実感しています。
収入は十分なのにお金を貯められないのは、エゴや承認欲求に影響されているから。貯金に目的が必要と思い込んでしまうのは「何かに備えることの価値」に気付いていないから。完璧な資産設計を目指すあまり、誤りの余地を許せない心理が逆にリスクを高めてしまう。
本記事で紹介したこの3つのマインドは、全20章のうちの2つの章からごく一部を抜粋しています。本書では他にも、様々な目線や価値観に気付かせてくれる内容となっています。
最後に、『サイコロジー・オブ・マネー』の直訳は「お金の心理学」です。知っているかいないかで大きな差が出る「お金の心理学」をこの一冊で身に付けてみませんか。
資産形成に自信がある人も、これから学びたい初心者も、ぜひ手に取ってみてください!