新NISA利用状況まとめ|投資先・売却率・年代別の違いとは?

資産運用・投資
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2025年6月、金融庁から「NISA口座の利用状況に関する調査結果」が公表されました。

新NISAの開始から約1年が経過したタイミングでの、最新の利用実態を示す興味深いデータです。

この記事では金融庁の公表資料を基に

  • 新NISAの口座数
  • 年代別の平均投資額
  • 投資先(どんな資産が選ばれているか)
  • 売却状況(どれくらい売られているか)

といった注目ポイントを初心者にもわかりやすくまとめました。

新NISA制度の世間の動向が気になる方に向けて、FPおよび証券外務員一種の視点で解説します。

引用元:金融庁 NISA口座の利用状況に関する調査結果の公表について

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金融庁データで見る年代別NISA口座数と買付状況

本記事は、2025年6月17日に金融庁が公表した「NISA口座の利用状況に関する調査結果」を基に解説しています。

この資料ではNISA口座に関する様々な数字が報告されていますが、まずは年代別の口座数と、その中でも2024年に買付がなかった口座の割合に注目してみましょう。

年代NISA口座数2024年買付なし買付なし口座の割合
10歳代120,28369,41757.7%
20歳代3,005,4631,029,01534.2%
30歳代4,581,6901,343,92729.3%
40歳代5,041,6321,572,31331.2%
50歳代5,103,4501,688,42833.1%
60歳代3,943,5421,495,76637.9%
70歳代3,047,6751,579,62451.8%
80歳代以上1,768,9131,331,76675.3%
全年代26,612,64810,110,25638.0%

2025年6月に金融庁が公表した「NISA口座の利用状況に関する調査結果」によると、2024年末時点でのNISA口座数は約2,661万口座にのぼります。

そしてそのうち約38%の口座が「2024年中に買付がなかった」と明らかになりました。

特に70歳代80歳代では、NISA口座の約半数以上が「2024年中に買付なし」という結果となっています。この年代では、すでに資産を保有しており運用のステージから取り崩しのステージへ移行していることが背景にあると考えられます。

つまり新たに買い増すことはせず、保有資産を徐々に使っている状態と言えるでしょう。

一方で、10代や20代などの若年層で買付なしとなると「とりあえず口座を開設したものの手をつけていない」というケースが想像されます。

せっかく新NISA口座を作っても、投資の一歩目を踏み出せない層が一定数いることが、このデータからも読み取れます。

2024年新NISA買付先|年代別の投資信託・株式・ETF・REITの割合

金融庁のデータによれば、2024年に新NISAで買付された資産の総額は約17.4兆円です。その内訳を見ると、投資信託が全体の中で圧倒的に多く約11.4兆円を占めています。

■2024年の買付金額

年代上場株式投資信託ETFREIT合計
10歳代87億円181億円7億円1億円278億円
20歳代2632億円8636億円276億円18億円1兆1563億円
30歳代7272億円2兆1427億円1008億円65億円2兆9774億円
40歳代9539億円2兆4623億円1289億円118億円3兆5570億円
50歳代1兆350億円2兆5422億円1157億円151億円3兆7082億円
60歳代9900億円2兆839億円717億円147億円3兆1605億円
70歳代9693億円1兆935億円259億円112億円2兆1000億円
80歳代以上4494億円2348億円62億円41億円6946億円
全年代5兆3970億円11兆4415億円4778億円655億円17兆3821億円

■投資先の割合

年代上場株式(%)投資信託(%)ETF(%)REIT(%)
10歳代31.5665.202.770.47
20歳代22.7674.692.390.16
30歳代24.4271.973.390.22
40歳代26.8269.223.620.33
50歳代27.9168.563.120.41
60歳代31.3365.932.270.47
70歳代46.1652.071.230.54
80歳代以上64.7033.810.900.59
全年代31.0565.822.750.38

年代別に見ると、若年層では投資信託が主流です。年代が上がるとともに投資信託の比率が下がりますが、60代までは依然として投資信託がメインの投資先となっています。

70歳以上の高齢層になると上場株式の比率が急増し、70歳代で約46%、80歳代以上では64%と突出しています。

配当収入を重視する投資姿勢や、個人向け投資信託がまだ一般的ではなかった時代の投資経験による、個別株中心の運用が影響していると考えられます。

REIT(不動産投資信託)について
REITの買付割合はどの年代でも1%未満と低めですが、RIETから得られる分配金は配当控除の対象外です。そのため、課税されないNISA口座で保有することは税制メリットが大きく、NISAと相性の良い投資先と言えます。
税制面を踏まえて今後RIETの活用が注目される可能性もあるため、資産配分の選択肢として意識してみる価値があります。

売ってる人もいる?年代別の売却状況

金融庁の調査データでは、2024年の売却額を年代別、投資先別に確認することができます。長期保有が基本とされるNISA口座ですが、実際の利用状況を見ると売却も一定数行われていることがわかります。

ただし2024年の売却額は、過去にNISA口座で購入した資産の、含み益もあわせた売却金額であるため、「2024年の買付分が売られた」とは限りません。

■2024年の売却金額

年代上場株式投資信託ETFREIT合計
10歳代29億円490億円1億円0億円520億円
20歳代1,041億円584億円53億円2億円1,681億円
30歳代2,451億円1,112億円148億円9億円3,720億円
40歳代3,013億円1,283億円179億円13億円4,488億円
50歳代2,883億円1,319億円152億円15億円4,369億円
60歳代2,474億円1,175億円99億円15億円3,763億円
70歳代2,538億円804億円48億円13億円3,403億円
80歳代以上1,159億円318億円12億円5億円1,494億円
全年代1兆5,591億円7,086億円691億円72億円2兆3,440億円

■2024年の買付金額に対する売却金額の割合

年代上場株式投資信託ETFREIT合計
10歳代33.2%269.6%15.6%12.1%186.8%
20歳代39.6%6.8%19.3%13.6%14.5%
30歳代33.7%5.2%14.7%13.6%12.5%
40歳代31.6%5.2%13.9%11.2%12.6%
50歳代27.9%5.2%13.1%9.8%11.8%
60歳代25.0%5.6%13.8%9.9%11.9%
70歳代26.2%7.4%18.5%11.3%16.2%
80歳代以上25.8%13.6%18.6%11.8%21.5%
全年代28.9%6.2%14.5%10.9%13.5%

※赤文字の『10歳代の投資信託売却』が異常に多いですが、ジュニアNISAの資産移管など特別な事情が影響している可能性があります。そのため、実際の若年層の取引活動を反映しているとは限りません。

まず上場株式はどの年代でも25%~40%と高い売却率を示しており、他の投資先と比較して売却活動が活発であることがわかります。

一方で、高齢層を除いた投資信託の売却率は5%程度と低水準です。70歳代以降は投資信託やETFも売却割合が上がり、ライフプランが「運用期」から「取り崩し期」に移行することを示しています。

20歳代で投資信託の売却率が高め

もう一点注目したいポイントは、20代の投資信託の売却率(6.8%)が、30代~50代の5.2%と比べてやや高くなっている点です。

この背景として「買ってみたものの不安になって売ってしまう」という行動パターンが懸念されます。

あるいは転職・結婚などライフスタイルの変化が激しい年代ですので、突発的な出費や環境の変化により、運用資金を現金化する必要に迫られる影響もあるかもしれません。

いずれにしても、
・値下がりしてもあわてて売らないように、自分なりの投資スタイルを固める
・急に必要になるかもしれないお金は、無理に投資せず手元に残しておく
など、少しずつ投資の基本を身につけていくことが重要です。

まとめ|新NISAの利用状況から見える傾向

金融庁が公表した「NISA口座の利用状況に関する調査結果」からは、世代によって投資スタイルや売却行動に明確な違いがあることがわかりました。

若年層では投資信託の比率が高く、年齢が上がるほど上場株式の比率が高くなる傾向が見られます。また、年齢とともに売却も増えていくことから、ライフステージに応じた資産運用の変化が感じられます。

意外だったのは、「買付がなかった口座が想定以上に多いこと」や、「投資信託の売却も少なくない」という点です。制度の普及が進む一方で、運用や売却について迷う人もまだ多いのかもしれません。

そうした中で大切なのは「自分に合った投資スタイルを見つけること」です。

値下がり局面でもあわてず対応できるよう、無理のない資金で、少しずつ経験を積んでいきましょう。

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